妊娠中は免疫力が下がってるとかきくが、

幸いなことにまだ妊娠してから一度も風邪をひいていない。

もともとめったにひかないけど…。

さすがに今年くらいはインフルエンザのワクチンもしておくべきだろうかと少し考えたが、

普段やらないことをやるとなんか逆に調子が狂いそうでそれも怖い。


足の付け根の痛みは、だいぶマシになった。

でもお腹の張り?がひどい。たぶん張りなのだと思う……ちょっと動くと下腹がつっぱる感じで痛む。

痛くて動けず、晩ごはんを作れない日もあった。

仕事が終わった彼に電話して、「ごめんやけど何か買ってきて」と頼む。

彼はこういうとき嫌な顔をしたことがない。まず心配してくれて、何食べたい?などと聞いてくれる。とても優しい。

同じように体がつらくてお弁当が作れない朝も、

彼は「無理して動かれると心配だから、寝ててくれたほうがいい」と言う。


それとは別に、お腹が痛くて悶絶した日があった。

ちょうど起床時間の少し前、お腹の左側がズキンズキン激しく痛んで、どう姿勢を変えてもそれが治らず、

うなったり「いたい…いたい…」と思わず声が出て、彼を起こしてしまった。

「どうしたんやろ」と言いながら、彼は腰をさすったりお腹をさすったりしてくれた。

痛くて横になっていられず、四つん這いになってみたり座ってみたりしたが、どうしても痛い。

赤んぼがよく動いていたが、動かれると余計に痛かった。

「お腹張ってるよ」と彼が言う。

わたしは痛みにうめきながら、今までに得た知識を頭の中でごちゃごちゃひっかきまわして、

「多分これは早産とかそういうアレではないな」と思った。

お手洗いに行って出血してないかだけ確認したかったが、到底動けそうになかった。

でも何か出てる感じはまったくなかったし、痛みが規則的ではないし、痛いのは左側だけで腰や恥骨に響く感じでもないから、

よく聞く前駆陣痛とかとも違う気がした。

お腹の張りも、わたしが痛がって身体に力が入ってるせいだと、自分でなんとなくわかった。

だから彼に「大丈夫だと思う」と言った。少しずつ痛みが和らいでいるような気もした。

痛がるわたしにつきあううちに出かける時間が迫ってしまった彼は、

「大丈夫って、なんで言えるの。どうしよう、病院遠いしな・・・明日有給とってるし、休みにくいんやけど・・・」とギリギリまで迷って心配して、

「本当に大丈夫。遅刻しちゃうよ」とわたしが言うと、

「なんかあったら、お母さんに電話するんやで。俺も戻ってくるから。」と言いながら出て行った。

一人になってしばらくすると、痛みが徐々にひいていった。

枕元のケータイをとって、ネットで妊娠後期の痛みについて調べた。

この時期はまた一段とお腹が大きくなるので、靭帯が圧迫されて痛むことがあるという話があり、

「ああ、これかな」と思った。中期ごろにも一度そういう感じで痛くなった覚えがある。あの時はここまで痛くなかったが…。

この場合、病院に行って診てもらったところで異常は見つからないらしい。

動けるようになったので、お手洗いに行ってみたが、やはり何も出ていない。よかった。

彼に「お騒がせしました」とメールした。

夜にはもうまったく痛みはなかったが、彼が心配して「今日は動くな」と言い、晩ごはんはお弁当を買ってきてくれた。


彼が「明日有給とっ」たのは、二人で病院の両親学級を受けるためだった。

4講座あるのだが、ひとつも受けないうちに9ヵ月になってしまい、

今回やっと入院準備とお産の知識を教えてくれる講座にだけ参加したのだった。

「両親学級」といっても平日だったからか、夫婦で参加した人は少なく、わたしたちのほかにあと2組だけだった。教室は満員で、夫同伴の3組は同じグループにかためられた。

講座は、医師による異常分娩とその対処についての話と、出産シーンのビデオ鑑賞、あと入院前後のもろもろに関する説明が主だった。

進行表に「グループワーク」とあったので「うわ、嫌だな」と思ったのだが、

自己紹介と、ちょっと意見を出し合う程度のものだった。

このグループの3組はたまたま予定日が近く、みんな1月の前半だった。正月にかぶりそうなため、「正月に生まれると特別料金になる。最初の親孝行で避けてくれたらいいんだけど」とみんな言って笑っていた。

出産シーンの映像は、「うちとはだいぶ違いますけど」と司会の助産師さんが前置きしたとおり、なぜか助産院でのフリースタイル出産のものだった。

普通の畳部屋みたいな、ベッドなんかない所で、陣痛から出産・カンガルーケアまで全部やっていた。部屋には産婦さんと助産師さんのほかに、上の子どもや旦那さんやお母さんが常にいた。化粧っ気のない顔で、うずくまったり旦那さんに抱きついたりしながら痛みに泣き叫ぶ姿と声は、けっこうショッキングだった。家族たちはその凄い声を全部聞きながら、産婦さんの体をさすったり支えたりしていた。

「ひー、わたし無理」と思ってしまった。あんな姿になるのなら誰にも見せたくない。でも誰かにそばにいてほしい。彼だけで十分、ていうか精一杯だ。あんなに叫ぶほどの痛みなのか。わかってたけど、まのあたりにするとやはり怖い。わたしに耐えられるのか。「みんなやってきたことなんだから大丈夫」と義母は笑って言ってたし、「うちの家系はみんな安産だから心配ない」とうちの母も言ってたけど、怖いものは怖い…。


このショックと関係あるかどうかわからないが、

最近また少し情緒不安定に。

休日の夜だった。彼が眠った後、夜中に無性に寂しくなって泣いてしまう。まただ。もう何回目だか。

彼は目をさまし、「何? なんで泣いてるの?」ときいてくれたが、若干うっとおしそうだった。

わたしはすごく迷ったが、「寂しい」と正直に言った。

そしたら彼がキレた。

「俺、きょう頑張ったのに、足らんのか。俺が悪いんか。」みたいな。

「頑張った」と彼が言う意味はいまいちわからなかったが、確かにこの日は休日で、彼はずっとわたしと一緒にいてくれた。いろいろ動いてもくれた。洗い物もやってくれたし、買い物にも連れて行ってくれて、「今日は俺が」と晩ごはんも作ってくれた。ソファで眠りに落ちたわたしをベッドに連れて行ってくれたし、お風呂一緒に入ったし、テレビも一緒に見た。スキンシップもあった。ずっと優しかった。

「それなのになぜ泣かれなきゃいけないのか」と彼は思うのだろう。

彼がキレた事にびっくりして、悲しくて、わたしは余計泣いてしまう。声さえあげて。でも、考えたらわかった。

たぶん、わたしの「寂しい」は、そういうので100%埋められるものではないのだろう。

そりゃ彼が一日まったくわたしにかまってくれなかったら、もっともっと寂しいとは思う。でも、この日のように一日中一緒に過ごしても、それで満ち足りるわけではない。だから彼に何か不満を持って「寂しい」と言ったのではなかった。

でも彼は自分が責められていると思ってしまうのだ。眠いから余計、そうなってしまうのだろう。「こんな時間になってから言うって何やの」とか、「ああもうこれであと5時間しか寝られない」とかそういうこともぶつぶつと言う。

わたしは「どうしたのって聞いてくれたから『寂しい』って言っただけなのに、どうして勝手に自分が責められたと思って怒るの? 言わなければよかった。」と言う。別に文句を言いたいわけじゃないのに、こういう展開になるとこういう言い方になってしまう。

その日はそのままフェードアウトしたが、翌日になって「昨日はごめん。寂しいって言ってるサキにあの仕打ちはなかった。俺の被害妄想だった。」と彼は頭を下げてくれた。わたしが食べたがってたお菓子をお土産に買ってきてくれたりもして。

わたし、ケンカしたかったわけじゃないのにな・・・と苦々しく、申し訳なく思う。

こんなのもマタニティ・ブルーなのだろうか?

でも翌日、彼が埋め合わせみたいにゲームをやめて(このごろ彼は平日も休日も、少しでも時間があればパソコンでゲームをしている)セックスしてくれて、この日はわたしも寂しくならなかったので、

妊婦のくせに、わたしって結局してほしいだけなのか?とも思う(笑)。こんな浅ましい母親でいいのか(汗)。