入院中のこと。


母子同室でたいへんなのは、やはり夜だった。

最低でも2~3時間ごとに息子が泣くので、なかなか眠れない。

授乳してすぐに眠ってくれるときなどはまだいいのだが、

母子ともに不慣れなため、うまくいかないことも多かった。

上手に授乳するには、乳首を深く口の中に入れて吸わせないといけないのだが、

息子は乳首をくわえるときに焦ってしまうらしく、手を思い切り突っ張るので、結果的に自分でおっぱいを押しのけるような格好になってしまう。この癖(?)は2か月になった今もそうだし、乳首をくわえればしっかり飲むので別に問題ないとわかるのだが、最初は「おっぱいいらないの?」と思ってしまった。

それに、押しのける息子と近づけようとするわたしで攻防になり(笑)、結局深くくわえさせられず、乳首が傷ついて血豆みたいなのができてしまった。こうなると、授乳のたびに激痛。息子が吐き戻したものの中にはがれた血豆が混じっていて、スタッフの人をびっくりさせたりもした。


2日目か3日目あたりだったと思うが、夜中、授乳がうまくできず息子がひどく泣いて、二人部屋なので気を遣って仕方なく、息子を抱いて部屋を出たことがあった。誰もいない授乳室に入り、泣き続ける息子を抱っこしてうろうろして、また授乳を試みるのだが、やはり息子がおっぱいを押しのける。思わず涙が出てきてしまった。心が折れる瞬間がはっきりとわかった。

夜中に廊下に出ると、ほぼ必ず複数の赤ちゃんの泣き声が響いている。どこも大変なんだなあと思う。ずっと一人で不機嫌な赤んぼと向き合ってると、睡眠不足もあって病んでくるのだが(笑)、夜はスタッフの人が2回くらい様子を見に来てくれるし、つらいときはナースステーションで2時間くらい預かってもらえるので、助かった。わたしも一度だけ預かってもらった。自分でなんとかできなかった、というしょんぼり感と、助けてもらおうと決めたことでの解放感、両方があった。


それでも、母乳は順調に出ているようで――それに息子の飲みっぷりもいいようで、3日目くらいに授乳室で計ってもらったところ、54g(cc?)という数字が出た。基準がよくわからなかったのだが、スタッフの人に驚かれたことからすると、けっこう多いらしい。その後も、スタッフの人に世話になるたびによく「あのよく飲む赤ちゃんね」と言われたのだった。

入院生活自体はけっこう快適で、何が良かったかって食事が種類豊富でヘルシーでおいしかったことだった(笑)。母乳育児にこだわっている病院なので、「いいおっぱいを出すため」というのもあったみたいだが。

産んだ次の日はシャンプーしてもらえたし、毎日シャワーも使えた。デコルテエステのサービスもあった。アイスクリームやシフォンケーキのおやつが出る日もあった。

午後2時からは面会が可能になり、母が必要なものを持ってよく来てくれた。彼も2日に1度は顔を出してくれた。仕事が終わってからだとほんの少しの間しかいられないのに、それでも来てくれた。

引っ越しを控えていたため、その手続きの関係上、出生届けの提出を少し急ぐことになった。ので、入院中に名前を決めて届けを出した。

妊娠中からだいたい決まっていた名前。字だけギリギリまで迷っていたのだが、二人で話し合って決めた。

そうして、母子ともに元気に過ごし、5日で退院となった。

わたしの子宮の戻りも順調だったし(仰向けに寝てお腹にさわると、こりこりと固いものがあり、それが子宮だということだった。今しかさわれないからねーと言われた)、息子も何一つひっかかることなく退院診察を終えた。

退院の前に、息子をとりあげてくれた助産師さんからメッセージカード(息子宛て)をいただいた。嬉しくてほろり。